零細業者の乱戦業界
探偵社とはどういうものか、業界の概要を簡単に紹介します。
探偵社は、探偵事務所、興信所などとも呼ばれます。
これらはすべて同じものだと捉えて結構です。
調査会社という呼称が使われることもありますが、これは必ずしも興信所を意味しません。
保険調査、マーケティング調査、地質調査など、他種の調査の会社も調査会社だからです。
興信所・探偵社のサービス
どの探偵社でも一番多い仕事は浮気調査で、依頼件数の7割以上を占めます。
次に多いのが人探し(主に家族による家出人探し)で2割ぐらい。
あとは結婚調査、各種の身辺調査、盗聴器発見・除去などです。
浮気調査専門で、他の調査は引き受けない探偵社もあります。
業界の概要
開業には公安委員会への届出が必要ですが、単なる書類提出です。
国家資格や免許などはなく、書類を提出すれば簡単に開業できます。
それだけに参入はとても多く、一方で廃業も多いです。
5,000社を超える届出がありますが、活動実態のないペーパーカンパニーも多く、活動している会社も大半が個人業者・零細企業です。
10年以上の歴史があり、全国展開しているような企業は数えるほどしかありません。
技術や装備のレベルは玉石混淆です。
一方で、業界情報は乏しく、各社のサイトもあまり具体的な情報を提供していないことが多いので、ユーザーが優良な探偵社を見つけ出すのはとても難しい。
そのため、消費者トラブルは多いです。
探偵に関する法律
探偵に関する法律は、2006年制定、2007年施行の探偵業法だけです。
この法律の正式名称は「探偵業の業務の適正化に関する法律」で、消費者トラブルを減らすために探偵業を規制する内容です。
例えば、依頼者の調査結果を他の目的に使用してはいけないとか、ヤクザは探偵業をできない、といった内容です。
探偵の資格や特権を定めた内容ではないので、注意してください。
探偵には資格も特権もなく、一般民間人と完全に同じです。
捜査権とか、サイレンを鳴らして赤信号を渡る特権とかはないのです。
一般人と同じ権利の範囲内で、尾行や聞き込みを行うわけです。
探偵のルーツ
この業界には、判明しているだけで2つのルーツがあります。
ひとつは明治時代にできた興信所。
この時代の興信所は、企業の信用調査をする機関でした。
つまり、財務が健全で倒産の心配はないかといった調査です。
これがその後に手を広げて、浮気調査などの個人調査もするようになっていきました。
しかし、このルーツを持つ帝国興信所は1980年代に社名を変更して、業務を企業信用調査に絞ります。
それが帝国データバンクで、企業信用調査業界はここと東京商工リサーチの2社でほとんどのシェアを持っています。
今では探偵業界と企業信用調査業界はほぼ完全に分離しており、帝国データバンクを興信所と呼ぶ人はあまりいないと思います。
ただ、昔の興信所の個人調査部門で探偵になった人から教えを受けた人は多いと思われます。
もう一つのルーツは、やはり明治時代に警察官を退任して私立探偵事務所を開いた岩井三郎です。
岩井三郎事務所は日本最古の探偵事務所と言われており、3代続きました。
以上のような業者のDNAを持つ人々、そして素人から始めて独学でノウハウを身に着けた人などが混じりあって、現在の探偵業界を作っていると思われます。